狂犬病について
狂犬病は、150ヶ国以上で毎年59,000人の死者を出すと推定されており、症例の95%はアフリカとアジアで発生しています。
報告不足と推定の不確実性のため、この数字は大幅に過小評価されている可能性があります。
病気の多くは、農村部の貧困層での発生で、症例の約半数は15歳未満の子供です。
狂犬病ウイルスについて
狂犬病予防法(抜粋)については こちら(PDF)をご覧ください。
狂犬病の歴史
紀元前2300年頃のイラクのバグダッド近郊で発掘されたエシューナ法典に記載されている。(犬が市民を噛み、市民が死亡した場合は、会場は40シュケルの銀を支払い奴隷か噛まれて死んだ場合は麦汁の銀を支払うべし)と記載されている。犬の狂犬病を科学的に記録したものは、紀元前450年頃のギリシャのデモクラテス、アリストテレスの動物誌に記載してある。犬は3種類の病気にかかる。このうち、狂犬病は狂気を起こし噛まれた動物は、人以外は皆凶器になる。(島崎三郎訳)ヒポクラテスは、水を恐れ少しの音で痙攣を起こすという人間の病気を記載している。この時代にはすでに認識されていたのである。
世界各国・日本での発症状況

世界での流行
紀元前では限られた地域の野生動物の間で見られていたが、食料の増産、人や犬の増加による生活圏の拡大、交通機関の発達、植民地支配により、徐々に感染地域は拡大していった。13世紀以降のヨーロッパ中世では散発的に流行した。1271年フランコニアで狂犬病の狼が村を襲い、1500年代にはスペインで犬の狂犬病が流行し、1586年までにオーストラリアからトルコまで広がった。
1700年代には犬の狂犬病はヨーロッパ大陸の各地で見られていた。1734年頃イギリスで犬の狂犬病が流行した。1750年に米国で犬の狂犬病が観察されている。1783年頃にジャマイカ、ハイチまで達し、多数の家畜や住民が犠牲になっている。
1800年代に入るとヨーロッパで流行が拡大した。特にフランス、ドイツ、イギリスで著しく、1830年代には米国の大草原で、スカンクの狂犬病が報告される。1803年頃はペルーで初めて狂犬病が認められ、南へと拡大していった。1850年代にアメリカのカリフォルニアでもスカンクの狂犬病が認められた。
アジアアフリカ中南米での発生
アジア地域での加害動物は95%は犬である。アフリカでは、犬の他にジャッカルやマングースなどの野生動物である。稀に吸血コウモリも重要な媒介動物となっている。
日本での流行
記録によると「医心方」に狂犬病の記載はあるが、蔓延していたとは考えられない。日本で犬の頭数が増えて野良犬対策が必要になったのは、5代将軍 徳川綱吉の時代である。1687年の犬の生類憐みの令からである。保護犬を、目付けまで届けを出すことが義務付けられてからである。これには色々厳しい項目があり、庶民は犬を飼うことを避けるようになり、記録の中では、野良犬が増える結果となった。
感染経路
狂犬病に患った動物(アジアでは主に犬)に噛まれて感染する。噛まれた部位から唾液に含まれるウイルスが侵入し、神経を伝わり脳へ達し発症する。通常ヒトからヒトへの感染はない。
どんな動物に感染するか
哺乳類全般(犬、猫、牛、馬、サル、キツネ、オオカミ、コヨーテ、ジャッカル、スカンク、アライグマ、コウモリ、マングース、袋ネズミ)
アメリカ大陸では、コヨーテ、スカンク、アライグマ、コウモリなどの野生動物が主な感染動物です。
コウモリは感染すると狂暴となり人を襲います。コウモリの群棲洞窟では、粉塵による経鼻感染もあります。
犬・猫の経過と症状
犬の場合
潜伏期は20日から60日くらいで、咬傷部位が脳に近いほど発症は早くなる。
前駆期
2〜3日の経過を経て、軽度性格の変化が起き、異常行動がでる。活動性の増加、挙動不審、過敏、神経質で落ち着かない様子で怒りっぽくなる。
異物を好んで食べたり、刺激に対して噛む行動をする。
興奮期
【狂騒型】1日〜7日間(平均3日間)で、最も症状が明白な時期である。攻撃性が増加し、わずかな刺激に対しても過剰な反応を示す。
この時期は出会うものには何でも噛みつく。また、喉頭筋群の麻痺のため、鳴き声がする。咬筋や嚥下筋も麻痺し唾液を垂れ流す。
【麻痺型】
興奮期が短く気が付かれず、食べることも飲むこともできなくなり、よだれを垂らす。末期には痙攣発作が起きる。
麻痺期
足腰が立たなくなり大量のよだれが出て、全身の麻痺と衰弱が進行し死亡する。猫の場合
犬よりも攻撃性がより一般的に認められる。
前駆期一般に1日の経過を取る
性格の変化と行動の異常がでる。不機嫌な猫が、より機敏となり落ち着きがなくなり、注意深く親しげになることもある。一方愛らしい猫が突然引っ掻いたり噛んだりしてうつ状態になり、暗い場所に引っ込んでしまうこともある。性欲の亢進(ペニスの持続的勃起)、瞳孔散大、結膜反射の消失がある。興奮期一般に2~7日間の経過を取る。猫では、この症状が最も多い
筋肉の緊張増加、筋肉の短収縮、全身の筋肉の震顫、筋肉衰弱、著しいよだれ、神経過敏、攻撃性の増加などの症状がひどくなる。目に入るものを頻繁に噛む傾向を示す。嚥下筋肉の麻痺により唾液が溜まり、流涎を起こす。痙攣は徴候が見えてからほぼ5日目に顕著となり、後肢の麻痺が急速に進行する。麻痺期一般に3~4日の経過を取る
この段階が顕著な場合は興奮期がないか、もしくは極端に短く犬で見られる典型的な下顎麻痺や顎脱落の徴候を示すものはまれである。嚥下筋肉が早期に麻痺を起こすために飲食が困難となる。全身の麻痺が起こり徴候開始から3~4日以内に昏睡して死亡する。犬・猫に噛まれた時の対処法
石鹸などの海面活性剤や有機、溶媒酸化剤など化学物質等で洗うこと。また酸(pH3以下)アルカリ(pH11以上)で不活化となる。誤って噛まれた時、傷口を石鹸と流水で十分に洗うことが大切です。
届出について
犬が人を噛んだ時には、最寄りの保健所へ届出が必要です。
当日、遅くとも翌日にかかりつけ動物病院で、狂犬病検診票の診断を受けてください。診察を受けてから1週間目と2週間目の2回、診察を受けてください。診断費用は飼い主様負担です。
アンケート集計(2022年10月1日報告)
2022年 動物愛護フェスティバルにて狂犬病に関するアンケートを集計しました。
Q01
狂犬病は犬の病気でもありますが、人に感染し発病すると100%死亡することをご存知ですか?はい:81.5%(75人)
いいえ:18.5%(17人)
Q02
世界では狂犬病で年間約55,000人近くが死亡していますがご存知でしたか?はい:32.6%(30人)
いいえ:67.4%(62人)
Q03
国が定めている犬の狂犬病予防ワクチン接種は生後91日からですが、ご存知ですか?はい:56.5%(52人)
いいえ:43.5%(40人)
Q04
狂犬病は犬に噛まれた人が感染することが多いですがそれ以外の感染経路は?狂犬病の犬に目や口を舐められる、前足で引っかかれても感染します。ご存知でしたか?はい:47.8%(44人)
いいえ:52.2%(48人)
Q05
狂犬病は犬による咬傷が多いですが、犬以外に感染する動物は、猫、ハムスター、キツネ・アライグマ・スカンク、コウモリなどの野生動物、哺乳類はすべて感染しますが、ご存知でしたか?はい:46.7%(44人)
いいえ:53.3%(49人)
Q06
2020年、日本で輸入狂犬病(フィリピン国籍の人が海外で犬に噛まれて、その後日本に帰国し発症・死亡)の事例について、ご存知でしょうか?はい:48.9%(45人)
いいえ:51.1%(47人)
Q07
狂犬病の疑いのある犬に接触した場合、傷口の処置は、まず水と石鹸、イソジン等で充分洗浄する事ですが、ご存知でしょうか?はい:38.5%(35人)
いいえ:61.5%(56人)
Q08
狂犬病を発症した場合、狂騒型と麻痺型の2つがあります。(複数回答)知らなかった:74.0%(71人)
知っている:15.6%(15人)
詳しく知りたい:10.4%(10人)
関心はない:0%(0人)
Q09
人が狂犬病の犬に噛まれた時、暴露後狂犬病ワクチン接種という治療法をご存じですか?知らなかった:65.6%(61人)
知っている:26.9%(25人)
詳しく知りたい:7.5%(7人)
関心はない:0%(0人)
Q10
法律上、生後90日を経過した犬は、狂犬病ワクチンを接種することが義務付けられています。ご存じでしたか?はい:90.1%(82人)
いいえ:9.9%(9人)
Q11
犬が人を噛んだ時、飼主は管内の保健所(健康福祉センター)に“飼い犬こう傷届出”を⾏い、動物病院で狂犬病の診断を⾏う義務があります。ご存じでしたか?はい:52.2%(48人)
いいえ:47.8%(44人)
Q12
狂犬病ワクチンの接種もせず、登録もしない飼い主は、法律で罰金刑に処せられます。ご存じでしたか?はい:75.0%(69人)
いいえ:25.0%(23人)
Q13
狂犬病予防接種を受けていらっしゃらない飼主様へ:接種しない理由は?忘れていた:2.2%(2人)
今回これを機に接種することにしたい:2.2%(2人)
しなくても良いと聞いたことがある:1.1%(1人)
注射する機会がない:0%(0人)
アンケート回答者
年代
40歳代〜27.2%
50歳代〜27.2%
30歳代〜17.4%
60歳代〜17.4%
20歳代〜6.5%
10歳代〜4.3%
男女割合
女性80.8%
男性19.2%
飼育環境割合
1頭61.4%
2頭15.9%
犬以外にネコ等(猫、鳥)
飼養している13.6%
3頭以上9.1%
委員⻑ 橋本 良⾏
協力:狂犬病臨床研究会